病理診断科

病理診断科は病理診断を医療行為として行う、臨床部門に属する科として、平成26年度に標榜科としてスタートしました。診療科としての病理診断科は医局に属しております。

 検査としての病理部門は中央検査部臨床検査科内の生理検査、超音波検査、生化学・一般検査、感染症検査、遺伝子細胞検査とともに病理研究検査センターとして業務を行っています。

患者さんの体から採取された組織や細胞を標本にして、顕微鏡でみることによりどんな病気なのかを検査します。スタッフは病理専門医(日本病理学会認定病理専門医、日本臨床細胞学会認定細胞診専門医)2名で業務を行っています。

組織検査と細胞診

  1. 組織検査

手術や内視鏡でとられた臓器の塊を標本にして顕微鏡で検査します。検査する標本は組織(臓器の塊)を薄く切り、ガラス板(スライドガラス)に貼って染色したものです。

組織は水分が多く柔らかいので、水を抜き(脱水)、パラフィンで固めた後(包埋)、薄く切ります(薄切、ハクセツと読みます)。だいたい3μmの厚さで切ります。これがどのくらい薄いかというと300枚重ねて1㎜になる厚さ(薄さ)です。薄切標本は吹けば本当に飛んでどこかにいってしまいます。

結果が出るまでは生の組織を固定し、標本製作と検鏡、報告入力、報告出力の段階を経て通常、生検(内視鏡でとられた小さい組織)の場合は組織採取日を含めて2日から数日かかります。手術で摘出した大きな組織は1週間程かかります。診断が難しい標本はさまざまな方法で調べるため結果を出すまで数週間もかかる場合もあります。

手術中にすぐに病気の種類や範囲を知りたい場合、組織を凍結したあと薄く切り、染色して顕微鏡で観察、診断します。通常10分以内で診断可能です(迅速診断)。

診断は病理専門医が行い、診断困難な症例はコンサルテーション(専門家の診断)を依頼しています。

  1. 細胞診

組織をこすって(擦過)採られた細胞や、分泌液中の細胞をスライドガラスに塗って染色し、顕微鏡で一個一個の細胞を観察することによって検査します。細い針で病気の部位の細胞を吸い取って検査する方法(穿刺吸引細胞診)もあります。主にがん細胞があるか否か、スライドガラスに塗った細胞全て細胞検査士が観察し、がん細胞等の異常細胞が発見されましたら細胞診専門医が診断します。

  1. 病理解剖

 病気で亡くなった患者さんが実際にどのような病気であったのかを調べるための解剖です。遺族の許可のもと、臨床医の求めに応じ、病理解剖を実施しています。病理解剖の結果は全医師を対象とした臨床病理カンファレンスを行い、臨床所見と対比し、死因・治療効果、合併症の有無などを再検討します。これにより、医師の能力向上を図り、現在・未来の患者さんに対する医療能力向上を目指しています。

実績

実積症例数2020年度2021年度2022年度
組織件数4,5084,4344,556
細胞診件数3,5883,8673,852
剖検数15138
院外組織件数159187142

業績

論文

  1. 棟方 哲:III. 卵管腫瘍 7.漿液性卵管上皮内癌 (STIC)。 産と婦 特集:これでわかる婦人科稀少腫瘍 88(2):186-192, 2021.
  2. Munakata S , Kushibiki H, Akimoto T, Yamashita T, Shimoyama N: A case of endometrial carcinosarcoma containing sertoliform. endometrioid carcinoma component. Case Rep Pathol Volume 2021, Article ID 5868818, 9 pages, https://doi.org/10.1155/2021/5868818
  3. Munakata S, Yamamoto T. Application of immunocytochemical and molecular analysis of six genes in liquid-based endometrial cytology. Diagn Cytopathol 2022;50(1):8-17.
  4. Munakata S. (Timely review) Diagnostic value of endometrial cytology and related technology. Diagn Cytopathol 2022

学会発表

  1. 棟方 哲、佐々木 伸也、高瀬 未穂、山内 里紗、鈴木 雄策、茂山 かおり、岡村 友香里、山本 敏也、櫛引 英恵、下山 則彦:横浜システムにおけるATECの診断精度向上のための遺伝子診断の応用。 第59回臨床細胞学会秋期大会 シンポジウム9 (パシフィコ横浜 ノース)。2020年11月21日 (web)
  2. 棟方 哲、櫛引 英恵、下山 則彦、秋元 大志、山下 剛:Sertoliform endometrioid carcinomaの成分を有した子宮内膜癌肉腫の1例。 第110回日本病理学会総会。2021年4月22日 – 6月28日 (on demand)
  3. 櫛引 英恵、棟方 哲、下山 則彦:MSI-High判定で加療後、Microsatellite stable腫瘍の存在が剖検で判明した胃癌多発転移の一例。 第110回日本病理学会総会。2021年4月22日 – 6月28日 (on demand)

学術講演

  1. 棟方 哲:子宮内膜病変 up-to-date。2020年第80回細胞検査士教育セミナー(大阪、web)。2020年10月19日 – 11月8日 (web)
  2. 棟方 哲:子宮頸部腺型病変のWHO2020における改訂などについて。第82回細胞検査士ワークショップ。2021年7月30日 – 8月9日 (web)

スタッフ紹介

診療指導顧問

棟方 哲(むなかた さとる)Satoru Munakata

主な経歴

昭和58年 弘前大学医学部卒業
昭和62年 弘前大学大学院医学科卒業 医学博士

専門分野

外科病理、婦人科病理、細胞診

指導医・認定医・専門医

日本病理学会認定 病理専門医
日本臨床細胞学会認定 細胞診専門医
日本病理学会認定 分子病理専門医
International Academy Of Cytology FIAC
死体解剖資格