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病院局長就任のご挨拶 2018年4月1日

 この4月より、病院局長に就任しました氏家良人(うじけ よしひと)です。3月末に、岡山県から赴任しました。病院職員また函館市の方達に私を知ってもらう為に、今回は新任のご挨拶を詳しく、また、今後の抱負を少しだけ述べさせていただきます。
 私は、1949年に倶知安町で生まれ、高校まで同町で過ごし、1969年に札幌医大へ入学しました。ちょうど、大学紛争のために東大受験がない年でした。卒業後、札幌医大およびその関連施設で麻酔および救急集中治療の研鑽を積みました。市立函館病院でも1976年9月から10ヶ月間麻酔、ICUの研修をさせていただきました。
 1978年に全国で救命救急センターがつくられ、北海道では旭川赤十字病院に最初の救命救急センターが設置されました。設立から軌道に乗る期間の足かけ4年間を麻酔、救急集中治療に従事しました。1985年、札幌医大病院でも災害外傷部が改組され救急集中治療部が作られ、その準備、そして1987年からは副部長として7年半勤務しました。1990年にはユジノサハリンスクの3歳の重症熱傷患者を迎えに赴き、札幌医大で主治医として治療に当たりました。
 この頃、多くの診療科の若い医師、看護師、理学療法士の方達とチーム医療を行うことにより、人工心肺を用いた蘇生、経腸栄養を用いた重症患者の栄養管理、重症低酸素血症に対する腹臥位呼吸管理、ICUにおける早期理学療法などを行っていきました。当時としては先進的な試みでありましたが、現在、これらは重症患者管理の基本となっています。札幌医大救急集中治療部在任中には米国ピッツバーグ大学の肝移植ICUに文部省在外研究員として派遣していただき、米国方式のICUも学ばせていただきました。
 1995年から3年間は、宮崎医科大学(現宮崎大学医学部)の救急医学講座の准教授として赴任し救急医学講座の立ち上げに当たりました。ここでは、学生とともに宮崎市消防局に行き、救急車同乗の学生教育を開始しました。これも、医科大学では最初の試みでした。病院にいるだけではわからない病院前救急医療の現状を知り、また、救急救命士の能力の高さも知ることができました。3年間で150日の救急車同乗を行いました。
 その後、2年足らずでしたが、北海道立小児総合保健センター(今のコドモックルの前身)で、麻酔、集中治療に係わり、2000年から岡山大学へ救急医学講座の初代教授として赴任しました。当初はスタッフも私一人で、専任の看護師も病棟もないところからスタートしましたが、2012年には高度救命救急センターとなり、スタッフも立派に育ってくれ、岡山県、また、その枠を越えて救急医療の充実に貢献することができたと思っております。2001年から岡山県やその周辺で始めた心肺蘇生、外傷の初期対応、脳卒中に対する初期対応、Rapid Response などを教育する組織(NPO法人救命おかやま)は、現在は会員数が450名を超え、社会的にも認められた組織となりました。
 2015年に岡山大学を定年退官した後、倉敷にある川崎医科大学で岡山県の寄付講座として設立された救急総合診療医学講座の特任教授を務め、地域の医療教育に当たって参りました。この間、2012年から4年間は日本集中治療医学会理事長として集中治療医学の学問的、社会経済的確立のために努力いたしました。また最近は、救急集中治療領域では終末期、DNAR(患者本人または患者の利益に関わる代理者の意思決定を受けて心肺蘇生法を行わないこと)など臨床倫理の問題がたくさんあり、臨床倫理のセミナー開催、医療者への普及啓発に努めてきておりました。
 そのような中の昨年11月、そろそろ北海道に戻ってきてはどうかと誘われ、このたび函館市の病院局長をお受けしました。函館市は市立函館病院、市立函館恵山病院、市立函館南茅部病院、そして市立函館病院高等看護学院を運営しており、それらの事業管理者としての役割を仰せつかりました。
 多くの自治体病院は赤字を抱えております。市立函館病院もその一つです。多額の補助金を国、道、また、函館市からいただき、その医療の質を維持してきております。民間の病院がそれほどの大きな赤字ではなく、黒字である病院もある中で何故だろうと思われる方もおられると思います。しかし、函館病院の医療者は一生懸命働いておりますし、事務職員も医療者とともに頑張っております。
 赤字は国の政策による問題であると言えなくはありませんが、今いちど、市立病院の中でできることを職員とともに見直し、一方で、これまで以上の質を有する病院として、函館市民や近隣の市町村の皆様に安心してご利用いただけるように努力するつもりです。そして、他の頑張っておられる病院とともに協力、連携し、道内でこの地域が最も素晴らしい医療地域になるよう、大きな目標を立てております。
 皆様のご支援をいただきながら、進めて参りますので、宜しくご指導賜りますようお願い申し上げます。
函館市病院局長 氏家良人
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