婦人科悪性疾患に関する診療の詳細 > 子宮体がんにおける傍大動脈リンパ節摘出を含む初回腹腔鏡下子宮体がん根治手術


当科における腹腔鏡下子宮体癌手術について

早期子宮体がん(推定進行期IA期まで)では2014年4月より腹腔鏡下手術が健康保険の適用となり、保険適用上の施設基準を満たす病院では手術適応があれば治療の選択枝となります。当科は施設基準を満たしており適応があれば手術治療の第一選択としています。2015年までに科長前任地も含め約150例以上の患者さんに施行され、開腹手術と遜色のない成績を得ています。この手術は従来の開腹手術を腹腔鏡下手術に置き換えることで、手術切開創は非常に小さくなり、通常開腹術での15~30センチに比較し、腹腔鏡下手術では1箇所0.5~1センチ程度の小さな孔(トロッカー孔)が4〜5カ所程度となり、それに応じて術後の疼痛期間は短く術後回復も早くなり、結果的に早期離床、早期退院が可能になります(下図参照)。

また、拡大鏡(ラパロスコープ)を用いた繊細な手術となるため、出血量は非常に少なくなります(通常は100ml以下と献血量以下となる)。子宮筋腫のような良性腫瘍手術と異なり子宮を体内で小さく破砕して取り出すことはがんの散らばりを招くため破砕せずに取り出せる事が施行条件となります。子宮筋腫が合併してそのままでは取り出せないときは下腹部に小切開を入れて子宮を取り出すこともあります。
 本手術の健康保険の適用は術前推定進行期IA期(がんの子宮筋肉への浸潤が子宮筋の厚みの1/2まで)までとされていますが、IB期であっても技術的には充分に腹腔鏡下手術が可能です。しかしその場合骨盤リンパ節の郭清だけではなくより上位のリンパ節である「傍大動脈リンパ節」の摘出術を必要とするため現状では保険適用外となります。当院では2017年9月より「先進医療」である「子宮体癌IB期に対する傍大動脈リンパ節郭清術を含む腹腔鏡下子宮体癌根治手術」の施設承認をうけ、「先進医療」でのIB期およびII期での腹腔鏡下手術が可能となっています。また治療ガイドライン上推定IA期であっても傍大動脈リンパ節郭清施行が望ましいとされる類内膜腺癌グレード3症例や特殊型(漿液腺癌など)においても腹腔鏡下手術を施行することが可能です。この場合民間保険での「先進医療特約」に加入していれば、手術料金は「先進医療保険」から支払われます(各自の保険加入会社に要確認)。「先進医療」では手術費以外のすべては通常通り健康保険の適用となります。詳細については担当医にご相談ください。
 当院では腹腔鏡下子宮体がん手術(IA期まで)に際し、患者さんの希望があれば同時に腹腔鏡下に「センチネルリンパ節生検」が可能です(詳細はこちら)。本手術ではごく早期の場合を除き子宮摘出のみならず通常骨盤リンパ節郭清術を同時に行います。通常リンパ節郭清後には術後下腿浮腫(リンパ浮腫)が発症し、そのうち30%程度の患者にはその状態が持続するとされています。センチネルリンパ節生検により術中に転移が陰性と判断されれば、患者さんの同意が得られた場合当院では引き続き行われる骨盤リンパ節郭清術を省略しています(当院倫理委員会で承認された臨床試験として継続中)。この方法では当院でのこれまでの成績を見る限り術後下腿浮腫発症は0%で浮腫の予防が可能です。